「ある日」
 
                                                                                高田 敏子


 

私は愛してきた
花を 小鳥を 子猫を
私の産んだ小さな赤んぼを
花は枯れ 小鳥は死に
子猫はとても憎らしい老猫になって
私の大事な本箱やクッションに
おしっこをかける
成長した子どもたちは
愛は重荷とばかり 私の手をふりはらって
山登りにでかけたり・・・・・・

ある日私はきめた
「もう何も愛すまい」
一日 ソファにねころび
ゴハンなんて炊くのもやめて
「もう何も愛すまい」

そうくり返したとき 私のまわりで
すべての意味が失われてしまった
夕ぐれの意味 炎の意味 時計の刻む意味
そして 私の存在の意味までが――


 

毎日の生活の営みは
同じことの繰り返しで報われないような気がするときがある。
でも、繰り返すその単調なことの中に大きな意味があるのかもしれない・・