自分の感受性くらい

                 

                     茨木のりこ
 

  ぱさぱさに乾いてゆく心を
  ひとのせいにはするな
  みずから水やりを怠っておいて

  気難しくなってきたのを
  友人のせいにはするな

  しなやかさを失ったのはどちらなのか

  苛立つのを
  近親のせいにするな
  なにもかも下手だったのはわたくし

  初心消えかかるのを
  くらしのせいにはするな
  そもそもが ひよわな志にすぎなかった


  駄目なことの一切を
  時代のせいにはするな
  わずかに光る尊厳の放棄

  自分の感受性ぐらい
  自分で守れ
  ばかものよ



この詩はガンで壮絶な死を遂げた
アナウンサー「逸見」氏が読んで
自分を叱咤激励したといわれています。
自分の感性は自分で研かなくては・・・

2006.2
毅然とした人は旅立ちました
母の旅立ちの3週間後でした